寝台特急カシオペア「さよなら」乗車記


第1章「乗車への苦渋の決断」

私にはある大きな後悔が一つあった。
それは憧れ続けていた寝台特急トワイライトエクスプレスに乗車することがついに出来なかったことである。
アクションは起こしていた。計画を立て、10時打ちにも挑戦した。
がしかし、さよなら需要で激戦と化した寝台券争奪戦にアッサリと敗れ去ってしまうのであった。
その時点ではまだ乗る手立てがないわけではなかった。
キャンセル待ちに登録したり、オークションで落札すれば乗れるチャンスは繋がったはず。
だがそのどちらも気が進まず、結局あっという間にラストランの時を迎えてしまったのである。

時は経って、今また一つの寝台列車が姿を消そうとしている。
カシオペアである。北斗星と同じく、上野から札幌までを走るオールA寝台の超豪華寝台列車だ。
実はかつてこのカシオペアにも一度だけ乗車計画が立ちあがったことがある。
その時はみどりの窓口でソールドアウトで、また北斗星がバリバリだった時代でもあり、結果北斗星には乗れて旅は楽しめた。
思えばその時が最初だったのかもしれない。いつかはカシオペアにも乗ろうと決めたのは。

そして今回、カシオペアの運行終了の報を受け、友人と漠然ながら乗りたいね、という会話が初めて出たのは2015年の10月頃だった。
でもきっとトワイライト同様、さよなら需要でまず無理でしょ?というスタンスではあったが、
それでもどうにかして乗れないかという思いはあった。
そこでひねり出した苦肉の策が、だったら上りの切符獲得を狙えばいいじゃんってこと。
御存じ、寝台列車の切符というのは通常上り、つまり関東から行く人間にとっての帰りのものの方が取りやすく、
往路のそれよりも敷居が低いというのが定説なのだ。
いくら需要が高くても、わざわざ札幌から乗ってこようと考える人は少ないだろうから、
10時ピッタリに打ってもらえれば楽勝に取れるはずだろう。

計画が立ち、休暇の申請も通り、わざわざ10時打ちの日にも休みを取って乗り込んだみどりの窓口で3時間待ちをして行った10時打ち。
そこで我々の考えがいかに甘かったかを思い知ることになる。
10時ジャストに打ってもらったにもかかわらず、上りの切符すら取れなかったのである。
落ち込みましたねぇ。心が打ち砕かれましたよ。トワイライトの時の悪夢再びですもの。

そこからは迷いの日々でした。
キャンセル待ちには登録したものの、もはや乗車するにはオークションを利用するしかないと悟ったからです。
わかってはいても、転売糞野郎に高い金を払うのは嫌だったんですね。
でもそんな嫌悪感も、当初の乗車予定だった1週間前に比較的割安で出品されているのを見つけた時には大いにぐらつきました。
友人と電話で相談すること数時間、ついに我々は転売屋の軍門に下ったのでした・・・。
悔しさよりも、乗れずに後悔しない方を選んだわけです。
後々になってこの時の決断が間違っていたかどうかわかる時が来るだろうけど、今はただ乗りたい、その気持ちの方が大きかったってことです。
こうして念願だったカシオペアの寝台券を入手した我々は、ただカシオペアに乗るためだけに北海道へと飛んだのでした。



第2章「たどり着いた瞬間」へ続く...